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離婚が成立した場合は、夫婦関係はなくなり、他人同士になりますが、親子の縁が切れることはありません。
通常、夫婦が離婚をし別々に暮らすようになった場合、その間に生まれた子供はどちらかの元に置かれ、育てられます。
しかし、子供が元・配偶者と一緒に住み育てられることとなっても(つまり親権・監護権が、元・配偶者にある状態)、もう片方の親も、子供とは二度と会えなくなるということはなく、子供に対して連絡を取ったり、会ったりする権利を持ちます。
このことを、面会交流権と言います。
面会交流権は、離婚をし、両親が別々に暮らすこととなっても、子供が健全に成長するには、できるだけ両親からの愛情が必要という考え方の元にあります。
なお、面会交流権は、離婚後初めて認められるという訳ではなく、何らかの理由で別居状態にある場合や、養子縁組である場合も認められますし、親同士が婚姻関係にない認知した子供との間でも認められる権利になります。
面会交流は、こうしなければいけない、という決まりはありませんが、通常は、離婚の際のさまざまな取り決め(例えば、財産分与など)をする際に、一緒に話し合うことが多いです。
後々のトラブルにならないように、できるだけ具体的に面会交流の内容を取り決め、書面化しておくのがよいでしょう。
などをある程度細かく決めておけば、後々に離婚した当人同士が何度も話し合う手間も省けることが多いと思います。
また、子供がある程度自分の意見をはっきりといえる年齢に達しているならば、子供自身の意見も尊重すべきでしょう。
本来ならば、離婚のさまざまな条件の話し合い同様、面会交流権の取り決めも、当人同士で取り決めることとされています。
しかし、日本の場合、離婚後は単独親権という方針が取られているせいか、親権・監護権を持ち、子供を手元に置いて育てている側が、もう片方の親に子供を会わせたがらないケースが少なくなく、面会交流権が成立しない・あるいは一度決めた面会交流権が守られないこともあります。
そのような当人同士での解決が困難な場合は、他の離婚の取り決めと同様、裁判に調停を申し立て、裁判所に解決を図ってもらうことになります。
この調停のことを「面会交流権調停」といいます。
次は、面会交流調停について具体的に見ていきましょう。
面会交流調停においては、裁判官・調停委員の他に家事調査官という立場の人が存在し、家事調査官によって行われた調査や調査官の意見が重要視されます。
家事調査官は、裁判官のような法律の専門家というより、教育学や心理学といった分野の専門家であり、教育学や心理学の観点から、「子供が健全に育っていくため」にどのような条件の面会交流を設定すべきかを調査を行います。
例えば、調査官が両親だけでなく、子供自身に意見を聞く場合もありますし、両親の家に行き、面会交流が適切に実施される環境にあるかということを調査することもあります。
他にも調査官立会の元に、何回か面会交流のテストを行い、そのときの子供の様子を観察するなどして、「どのようにしたら(離婚する両親ではなく)子供自身にとって幸せか」という視点から今度の面会交流の具体的な中身を検討していくこととなります。
裁判官は調査官による調査結果や意見を元に、親権・監護権を持つ側の親の意見や収入などの状況、親権・監護権を持たない、つまり面会交流権を求める側の親の意見や状況、子供自身の意見、離婚に至った経緯などを総合的に考慮したうえで、面会交流の内容を決定します。
面会交流調停では、必ずしも面会交流が認められるという訳ではありません。
例えば、
このような状況で子供の発育に悪影響を及ぼす可能性がある場合には、面会交流に頻度や時間が少ない、あるいは全く認められないこともあります。
しかし、上記のような状況でなく、調停により面会交流権の具体的な中身が決定していても、なお、面会交流が実施されないこともあります。
その場合には、たとえ、裁判所の決定だからといって、強引に子供と面会することは許されず、再度裁判所に対し、「履行勧告の申し出」を行います。
履行勧告というのは、いわば罰金のようなものであり、面会交流が適切に行われなかった回数に応じて一定の金額を相手方に対して支払わせることにより、間接的に面会交流の適切な実施を求めていくことになります。
離婚し、子供と離れ離れになっても、子供と会う権利(面会交流権)は存在します。
そして具体的な面会交流の中身について当事者同士の話し合いで合意できなかった場合には、調停を申し立てて解決を図ることとなります。
さらに、裁判で決めた面会交流が適切に実施されなかった場合には、相手方に対して金銭の支払いを命じ、適切な面会交流を求めていくことになります。
近年、面会交流を求める調停が増加する一方で、一度決めた面会交流が適切に行われない・面会交流中に子供や親が元配偶者に殺害されるというトラブルも増加しています。
面会交流は、あくまで親同士の都合ではなく、子供自身の適切な成長のために行われるべきであり、子供を抱える夫婦が離婚をして面会交流の取り決めを行う、あるいは面会交流を実施する場合には、子供のことを最優先に考えていってほしいものです。