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離婚とお金VOL39  財産分与や養育費が支払われない場合、いくら差押えができる?

養育費の支払いに関する調停が成立しているにもかかわらず、その後にきちんと支払いがなされないということは少なくありません。

この場合、指をくわえて養育費が支払われるのを待っていては、自分や子どもの生活が苦しくなる一方です。

そこで、任意での支払いを諦めて、調停が成立したことを証する調停調書に基づいて、夫の給料を差押えることが考えられますが、この場合、具体的にいくらまで夫の給料を差押えることができるのでしょうか。

給料を対象とした差押えは給料額の2分の1まで

離婚をする際に夫婦間で取り決めた財産分与や養育費の支払いに夫が一切応じない場合、そのまま夫が支払ってくれるのを待ち続けても支払いを受けられる可能性は低いでしょう。

このような場合、夫は経済的に困窮しているか、もしくは、そもそも支払う意思がないことが多いためです。

そのため、強制力をもって夫に養育費などを支払わせる必要があります。

そのための方法として挙げられるのが、「強制執行」です。

強制執行(差押え)

「強制執行」とは、国家機関を通して、ある人がもつ請求権を実現する制度のことをいいます。

たとえば、別れた夫の給料を妻が差押えることは強制執行にあたります。

強制執行をするためには、差押えの対象となる財産を特定しなければなりません。

この点、差押えることが可能な財産には、給料のほか、預貯金や不動産、その他の動産(貴金属や宝石など)があります。

給料や預貯金を差押さえた場合には、その差押さえた金額が妻に支払われることになります(ただし、妻が夫に請求している金額が上限)が、不動産やその他の動産については、まずは、それらを競売などにより現金化し、そのうえで、妻が請求している金額を上限として支払われることになります。

このように、強制執行の対象となる財産は複数ありますが、反対に、差押えることが禁止、制限されている財産もあります。

たとえば、給料を差押える場合、その全額を差押えることはできません。

仮に、給料全額を差押えることができることとすると、差押えられた側は自分の生活が立ち行かなくなってしまいます。

そのため、給料を差押える場合には、その全額を差押えることはできないことになっています。

具体的には、基本給と交通費を除く諸手当の合計額から、所得税と住民税、そして、社会保険料を控除した金額の4分の1までしか差押えることができないのが原則です。

もっとも、婚姻費用(別居中の夫婦や子どもが結婚生活を維持するために必要な生活費など)や養育費の支払いを求めるために、強制執行を申し立てた場合には、2分の1まで差押えることができます。

なぜなら、婚姻費用や養育費の支払いを受けられない妻は、生活をしていくことが困難になるため、保護をする必要があるからです。

たとえば、夫の給料(手取額)が30万円である場合、実際に差押えることができるのは、7万5000円までになり、その差押えが婚姻費用や養育費の支払いを求めるためのものであれば、15万円までとなります。

夫にめぼしき財産がない場合

調停で取り決めた財産分与や養育費が支払われない場合には、最終手段として、夫の給料を差押えることができるのはすでに見てきたとおりです。

もっとも、離婚をした時点ではサラリーマンであった夫が、その後リストラなどにより職を失い、無職である場合には、給料を差押えたくても、給料そのものが存在しません。

このように、夫にめぼしき財産がなく、財産としてはわずかな預貯金だけといった場合、わずかな財産に対しても差押えることはできるのでしょうか。

差押える財産の価値と債権額の比較

離婚時に取り決めた財産分与や養育費の支払いに夫が一切応じない場合、その支払いに関しての判決書や調停調書(=「債務名義」といいます)があれば、妻は夫の給料などを差押えることができます。

もっとも、債務名義さえあれば、どのような財産に対しても差押えができるというわけではありません。

具体的に、動産債権については、例外的に一部差押えが禁止されています。

差押えることを禁止されている動産

妻が夫の財産を差押える目的は、未払いとなっている養育費や財産分与の支払いを受けるためです。

たとえば、未払いとなっている養育費50万円を支払ってもらうために、夫が使っている中古車を差押える場合、中古車の価値が30万円だとすると、仮に、現金化したとしても、未払い分を全額回収することはできません。

このように、差押えようとする財産の価値が債権額(たとえば、未払いとなっている養育費)と執行手続きに要する費用の合計額を下回る場合には、強制執行を申し立てても、その動産を差押えることはできません。

この場合、申し立てを受けた執行官はその申し立てを取り消すことになりますので、執行手続きの費用や申立てのために費やした労力などが無駄になってしまいます。

また、債権額と執行費用の合計額を上回った価値をもつ動産についても、差押えが禁止されています。

このほか、現金化できる見込みのない動産、生活に必要不可欠な寝具や衣服のように法律で差押えが禁止されている動産についても、差押えることはできません。

差押えることを禁止されている債権

債権」とは、一定のことを相手に請求できる権利のことをいいます。

この債権についても、一部の差押えが禁止されています。

たとえば、「給料、退職金などといった性質をもつ金銭」などは、差押えが禁止されています。

もっとも、この種の債権については、その全額が差押え禁止の対象になっているわけではなく、原則として、その4分の3に相当する金額が差押え禁止の対象となっています。

そのため、残りの4分の1に相当する金額は、差押えをすることが許されています。

また、差押えの目的が、未払い分の養育費など扶養に関する債権を請求することにある場合には、例外的に、2分の1に相当する金額を差押えることができますし、差押えが禁止されている4分の3に相当する金額が33万円を超えている場合には、その超過分について差押えることができます。

このほかにも、「生計を維持するために支給される金銭」については差押えが禁止されています。

たとえば、生活保護手当や年金などが該当します。

以上のように、一部の債権を差押え禁止の対象としている理由は、いずれも差押えられた側の生活を保障するためであり、33万円を超えている分について差押えることを許しているのは、その超過分について差押えを許しても、生活を保障することができるからです。

まとめ

別れた夫が養育費などの離婚給付を支払わない場合、支払われるのを待ち続けることは得策ではありません。

このような場合には、夫に支払いの意思がない可能性が高いため、たとえば、夫の給料を差押えるなど、強制執行を申し立てることを検討すべきだと考えられます。

もっとも、強制執行を申し立てるためには、その対象となる財産を特定する必要があります。

そのうえで、夫に対して支払いを求めている金額と強制執行の対象となる財産の価値とを比較して、強制執行を申し立てるだけの実益があるかどうかをきちんと見極めることが重要です。

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