養育費の支払いは、通常長期間にわたって支払いが続くものなのです。
そのため、途中から不払いが起こるなどのトラブルが起こりやすい傾向があります。
養育費のトラブルを避けるためにできる対策などについて説明します。
養育費の支払い方法は、毎月一定額を定期的に支払うのが一般的です。
たとえば、子供が高校を卒業するまで毎月4万円を支払う、などと定めます。
そうすると、子供が離婚当時5歳の場合、13年以上毎月養育費の支払いが続くということになります。
このような長期の支払いによるトラブルを避けるため、当事者間で、養育費の支払い方法を分割支払いではなく一括払いにすることを取り決めることも可能です。
一括払いのメリットは次のようなものです。
これが最大のメリットと言えます。
養育費が途中から不払いになってしまうケースは非常に多いのが現実です。
残念ながら、離れて暮らしている子供に対する責任感や愛情は希薄になりやすいものです。
そのように配偶者が不誠実な場合はもちろんですが、配偶者が失業や病気等によって支払いができなくなるといった可能性も考えられます。
分割払いの場合、毎月、「来月もきちんと支払われるだろうか」と心配しながら長い年月を過ごさなければなりません。
一括で支払ってもらえば、そのような不安を感じることはなくなります。
元配偶者とはなるべく関わりを持ちたくないという人も多いことでしょう。
特に、元配偶者のDV等が原因で離婚する場合は、自分や子供の身の安全のために接触を避けたいと思うのが当然です。
養育費の支払いを一度で済ませてしまえば、元配偶者と接触しないで生活できる可能性が高くなります。
ただし、元配偶者と子の面会交流をすることを取り決めている場合には、元配偶者と接触せざるを得ません。
離婚により新たな生活を始める際、経済的な不安があることも多いでしょう。
そんな時、手元にある程度まとまったお金があれば、不安を軽減することができるかもしれません。
一方、一括払いには次のようなデメリットもあります。
養育費を一括払いでもらう場合、分割払いの場合よりも通常総額は少なくなります。
これは、一括払いで支払う分、金額は減額することを条件として養育費の取り決めをする場合がほとんどだからです。
一括払いできる金額には限りがある人が大半であり、総額が分割払いの場合と同じであれば、一括払いに応じてくれる支払い義務者は残念ながらほとんどいないでしょう。
実際、養育費の支払い方法は9割以上が分割払いです。
配偶者の性格や経済状況などをよく考えたうえで、一括払いと分割払いのどちらを提案すべきか判断しましょう。
養育費を一括払いにした場合、その金額が110万円を超えると贈与税の課税対象となります。
詳しくは、税理士や弁護士に相談しましょう。
養育費は、子供を養育するためのお金なので、子供のために計画的に使うべきものです。
しかし、離婚直後は引っ越し等で想像以上に出費がかさむことが多く、養育費としてもらったお金に手を付けてしまう場合もあるでしょう。
養育費は、あくまで子供を養育するために使うものだという自覚を持ち、大切に使うように気を付けましょう。
分割払いの場合には、不払いのリスクがつきものなので、それを防ぐための対策を講じる必要があります。
養育費について取り決めたら、必ずその内容を文書に残して、当事者双方の署名捺印をしましょう。
できるかぎり、正式な契約書の形式にし、「公正証書」にすることが重要です。
公正証書は、公証人が作成し、原本を公証役場という公的機関で保管してもらえるため失くしてしまう心配がありません。
公正証書には「強制執行認諾文言」を付けることができるため、万一養育費が不払いとなった場合に、相手の財産の差押えなどを裁判所の手続きを経ることなく実行することができます。
これは相手にとって大きなプレッシャーとなるため、不払いの可能性を低くすることにつながります。
また、支払いを怠った場合に備えて、担保を付けておくとより安心です。
担保には、不動産などの物的担保と、保証人である人的担保があります。
もし相手が自宅などの不動産を持っている場合は、不動産を担保にとって抵当権を設定するとよいでしょう。
不動産等の財産がない場合には、相手の両親やきょうだいを連帯保証人にしてもらえないか打診する方法もあります。
ただし、いずれも強制することはできないため、相手が拒否した場合は担保を取ることはできません。
現実には、保証人になることに同意してくれる親族等もなかなかいません。
場合によっては、担保を取ることの交換条件として、養育費を相場より多少低くするなどを提示して交渉することも検討しましょう。
養育費を取り決めた場合の文書を作成する際は、以下の内容を記しましょう。
文書のタイトルは、「合意書」、「協議書」、「覚書」などのいずれでも問題ありません。
③の支払い方法は、銀行振り込みにするのが一般的です。
現金での支払いはトラブルの原因にもなるので、できるだけ振込で証拠が残るものにしましょう。
④の養育費の終了時期をいつにするかは、人によって考え方が異なります。
養育費は、子供が成熟するまで(一般的には経済的に自立できるまで)支払うものですが、子供がまだ幼い場合、子供の進路は決まっていない場合が多いでしょう。
大学へ進学するかによっても子供が自立する時期は変わってきます。
それらを考慮せず、単純に満〇歳に達するまで、という定め方をすることが多くなります。
⑤については、養育費は長期にわたって支払いが続くことが多いため、途中で子供や親の事情が変わることはままあります。
そのような場合に備えて、増額請求を認める条項を入れておくと安心です。
ただし、この条項があるからといって、必ず増額請求が認められるわけではありません。
⑥の担保がある場合は、不動産であれば不動産の所在、地番などで財産が特定できるようにしましょう。
例外的な方法で、金銭以外で養育費の支払いをする場合があります。
時々あるのが、金銭ではなく、自宅を養育する側に譲渡する方法です。
住宅ローンが残っていれば、養育費の支払い義務者がローンの返済を続けることと取り決めることもできます。
ただし、この場合、万一元配偶者が住宅ローンの支払いを滞納した場合に、自宅が競売にかけられてしまうリスクがあります。
養育費の支払いは、トラブルが起きやすいものです。
ですが、きちんと対策を講じることで、リスクを減らすことは可能です。
どのような方法が適しているか、財産の状況や配偶者の性格などを考慮して判断し、対策を考えましょう。