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離婚するにあたっては慰謝料や財産分与が重要になりますが、離婚の際には話がまとまらないことがあります。
その場合には離婚後に請求することになりますが、請求できる期間には限りがあることに注意が必要です。
そこで今回は、慰謝料と財産分与それぞれについて、請求できる期間を解説していきます。
慰謝料については、離婚後であっても相手に請求することができます。
もっとも、慰謝料を請求できる期間については限りがあります。
離婚の際に生じる慰謝料については、民法709条の不法行為によるものと解されています。
そして、不法行為による損害賠償の請求権については、民法724条に規定されています。
民法724条は、「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。
不法行為の時から20年を経過したときも同様とする」旨を定めています。
同条により、慰謝料を請求することができるのは、原則として被害者が損害(配偶者の不貞行為など)及び加害者(不貞行為の相手方)を知った時から3年以内に限られることになります。
例えば、妻が夫の浮気と浮気相手の両方を知ったのが2015年4月である場合、2019年4月に夫の浮気について慰謝料を請求したとしても、3年の時効によって請求が認められないことになります。
一方、夫の浮気を知ったのが2015年4月で、浮気相手を知ったのが2018年4月である場合は、時効が開始するのは2018年4月であることから、2019年4月に夫の浮気について慰謝料を請求することは時効が完成していないので認められます。
民法724条は不法行為による損害賠償の請求権について3年間の時効にかかることを定めていますが、それだけではなく、不法行為の時から20年を経過したときも請求権が消滅する旨を後段で規定しています。
例えば、夫の浮気があったのが2015年4月である場合に、2036年4月に夫の浮気について慰謝料を請求しようとしても、不法行為の時から20年が経過していることから、慰謝料を請求することはできなくなります。
次に、民法724条に規定されている3年間と20年間の2種類の期間の法的性質については、3年間が時効(消滅時効)、20年間が除斥期間であると解されています。
時効と除斥期間の違いは、中断があるかどうかです。
中断とは、期間が完成する前に一定の事由によって中断となった場合、それまでの期間がリセットされて中断の時点から期間が進行することです。
例えば、3年の時効が完成するのが2019年4月のケースにおいて2018年4月に中断となった場合、2018年4月から改めて時効がスタートするため、時効が完成するのはそこから3年後の2021年4月になります。
時効には中断がありますが、除斥期間には中断はありません。
そのため、離婚の慰謝料については、3年間の時効は中断によって期間が長くなる場合がありますが、20年間の除斥期間については中断によって期間が長くなることはありません。
離婚の慰謝料について時効を止める方法は、大きく分けて2つあります。
1つ目の方法は裁判を起こすことです。
裁判を起こすことで慰謝料の請求を行った場合、その時点で消滅時効の期間は一旦リセットされます。
2つ目の方法は内容証明郵便を送付して慰謝料を請求することです。
内容証明郵便を送付して慰謝料を請求することは、法律における催告という行為に該当します。
催告が行われると時効が一旦停止し、催告をしたときから6ヵ月の間時効の完成を阻止することができます。
その間に交渉によって解決をする、裁判を起こして時効を中断させる、などの措置を図ることができます。
離婚時に相手が財産を持っている状態であれば、相手に対して財産分与を請求することができます。
財産分与の請求は離婚後にも可能ですが、注意点は、いつまでも財産分与の請求ができるわけではないことです。
民法768条は、「財産分与について当事者間に協議が調わないときは、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。
ただし、離婚の時から2年を経過したときはこの限りでない」旨を定めています。
この規定を受けて、財産分与を請求できる期間については、原則として離婚後から2年以内とされています。
財産分与を請求できる期間である2年間については、実務においては時効ではなく除斥期間であるとされています。
そのため、財産分与については慰謝料の3年間の時効とは異なり、中断を図ることはできません。
そのため、財産分与を請求する場合には必ず離婚から2年以内に行うことが重要です。
慰謝料と財産分与は離婚後にも請求することができますが、請求できる期間が法律で定められています。
慰謝料については原則として損害及び加害者を知ってから3年間の時効で、財産分与については離婚後2年間の除斥期間となります。
慰謝料の3年間については時効中断の措置をとることができますが、財産分与の除斥期間については時効中断できないので注意しましょう。