離婚の際には、金銭面での解決するべき問題がいくつかあります。
正当な権利として金銭を請求することができるケースが多いため、しっかりと知識を身につけておくことが大切です。
どのようなものがあり、どのように請求していくのかについて説明していきます。
離婚に際し、配偶者に対して金銭の給付を請求できることがあります。
これを離婚給付と呼びます。
具体的には、①財産分与、②慰謝料、③養育費、④婚姻費用の4種類があります。
それぞれについて、表で説明します。
種類 | 根拠条文 | 内容 |
---|---|---|
財産分与 | (民法768条) | 夫婦が婚姻期間中に協力して築いた財産を清算して、それぞれの個人財産に分ける制度。専業主婦(夫)で無収入だった場合でも、家事等により財産形成に貢献していたと認められ、基本的に2分の1ずつの割合で財産を分けることとなる。 結婚前に築いた財産や、結婚期間中であっても相続で得た財産は財産分与の対象外となる。 財産分与は、有責者(離婚原因を作った側)であっても請求できる。 |
慰謝料 | (民法709条、710条) | 配偶者の有責(不貞行為、DV等)により離婚となる場合に、精神的苦痛に対する賠償として配偶者に対し金銭を請求することができる。 慰謝料は独立して請求することもできるが、財産分与と一括して請求し、慰謝料分を財産分与に加味して請求し、財産分与のみで解決することもある。 また、不貞行為の場合には、配偶者の不貞相手に対しても慰謝料を請求することができる。 |
婚姻費用 | (民法760条) | 結婚期間中は、夫婦には相互に扶助義務があり、収入等に応じた生活費の分担義務がある。 別居期間中であっても、離婚が成立するまでの間、夫婦間の収入差がある場合収入の少ない方の当事者は、配偶者に婚姻費用を請求することができる。 例外的に、別居の原因が専ら収入の低い当事者側にある場合には、請求が認められなかったり金額が低くなる場合がある。 |
養育費 | (民法766条、877~880条) | 夫婦間に未成年の子がいる場合、夫婦それぞれに子供の扶養義務がある。 離婚により子供を養育する側の当事者(通常は親権者)は、養育しない側の元配偶者に対し、子供が成熟するまでの間の養育費を請求することができる。 成熟するまでとは、20歳までとすることもあれば、18歳までとすることもある。 |
離婚給付は、どのように請求すればよいのでしょうか。
まずは、当事者間での話し合い(協議)で決めることが基本です。
できるだけ感情的にならず、冷静に配偶者と話し合いましょう。
金額を当事者間で判断できない場合には、家庭裁判所が採用している婚姻費用や養育費の算定表を参照して話し合いましょう。
ただし、相手が話し合いに応じなかったり、条件が折り合わない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
調停を申し立てる前に、弁護士に依頼して、配偶者との話し合いを代理して交渉してもらうこともできます。
調停でも話がまとまらずに不成立となった場合には、最終的には裁判まで進むケースもあります。
状況や相手の性格に応じて、どのように進めていくべきかを判断しましょう。
それでは、実際にどれくらいの金額を受け取ることができるのでしょうか。
財産分与の相場というものがあるとは言えません。
平成26年の司法統計によると、半数以上が400万円以下となっていますが、財産分与の額は、夫婦で婚姻期間中に築いた財産がどれくらいあるかによって変わります。
基本的には、婚姻期間中に築いた財産を半分ずつの割合で分けることとなりますので、まずはどれだけの財産があるかを確認することが大切です。
財産には、預貯金、株式、不動産、生命保険といったものがあります。
婚姻期間中に厚生年金に加入していた場合、年金分割をすることができるため、年金も分与の対象となります。
ただし、不動産の場合、住宅ローンの返済中ということも多く、単純に不動産の価値の半分を請求できるといったものではありませんので注意が必要です。
慰謝料の金額は、離婚原因の内容、結婚期間の長さ等によって判断することとなり、現状婚姻費用や養育費のような算定表といったものはありません。
例えば不貞行為が原因の場合で考えると、不貞行為が続いていた期間が長ければ長いほど、結婚期間が長ければ長いほど金額は高くなる傾向はあります。
ただし、慰謝料は特別な高額請求が裁判所で認められることは少なく、50万円から500万円程度になることがほとんどです。
それ以上の金額が認められることは非常に稀です。
配偶者の有責事由について、心情的に許せない気持ちになり高額な慰謝料を請求したくなりがちですが、法外な要求をしてもそれが認められることはなく、いたずらに紛争を長引かせる原因となりますので、そのような要求は控えましょう。
自分の請求額が妥当かどうか、また、相手から請求されている金額が妥当かどうかは、弁護士に事前に相談するのが賢明です。
婚姻費用は、支払う側の収入、受け取る側の収入、子供の人数及び年齢によって金額を算定することが通常です。
家庭裁判所で採用している算定表を見れば、どの程度受け取ることができるのかを算定することができます。
夫婦間の収入差が大きければ大きいほど、子供の人数が多ければ多いほど婚姻費用は高額になるのが通常です。
別居となると生活費を払うことをしぶる配偶者が多くなりがちですが、正当な権利として妥当な金額をしっかり請求しましょう。
ただし、別居するための引っ越し費用等まで請求できるかというと、通常そこまでは認められませんので、別居の際には慎重に行動して、経済的に窮することがないように備えましょう。
また、一方的に自分から別居を開始し、不貞相手と同棲しているようなケースでは、自分の有責性が強すぎて婚姻費用の請求が認められない可能性があります。
養育費は、婚姻費用と同じような計算方法で、受け取る側と支払う側の収入、子供の人数を基に計算することが一般的です。
養育費についても家庭裁判所で採用している算定表がありますので、参照してどれくらいが妥当な金額か判断しましょう。
司法統計によると、平成26年度に調停等で決まった養育費は6万円以下となった事案が8割程度です。
養育費は、通常月額を決めて毎月支払うこととするのが一般的ですが、場合によっては、一括して全額を支払う取り決めをすることもあります。
養育費は、長期間にわたって支払いが続くものなので、途中から不払いとなってしまうケースが多くみられます。
そのようなことを防ぐためには、金額を妥協してでも一括払いにしてもらうか、養育費の取り決めを公正証書にするといった対策をすることが大切です。
また、養育費は長期にわたって支払いが続くため、当初とは事情が変わってくることも多くなります。
収入が変わったり、子供が重い病にかかったりするなど、さまざまな変化が起こりえます。
そのような場合、養育費の金額等の変更が認められることがあります。
離婚の際には、金銭面での問題を避けて通ることはできません。
離婚の準備をするほど夫婦関係が悪化しているときに、お金の話し合いをすることは双方にとってストレスになりがちですが、大切な問題なのでしっかり取り決めをする必要があります。
感情的なもつれなどで当事者間での話し合いが難しいと判断した場合、早めに弁護士に相談することも選択肢の一つです。