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正しいのは自分だけ!精神的DVについて知ろう

DV被害の相談が増加しているといわれています。
殴る蹴るの暴力もさることながら、言葉による暴力や人を無視したり見下したりする態度によるDVもあります。

ここでは何がDVにあたるのか。精神的DVの例。精神的DVは犯罪となるか、離婚理由や慰謝料請求できるか、正しい対処法などを解説します。

DV(ドメスティック・バイオレンス)とは何か?

DVは家庭内の暴力と理解されていた

DVとは、ドメスティックバイオレンス(domestic violence)の略語です。

ドメスティック(domestic)は、「内輪の」という意味で、通常は「家庭内」、「国内」と訳されます。報道でおなじみの経済指標GDP(国内総生産、Gross Domestic Product)では国内の意味ですね。

対して、DVの場合は、当初「家庭内」の意味で使われていました。

バイオレンス(violence)は「暴力」ですから、ドメスティックバイオレンスは一般的には「家庭内暴力」と訳されてきたのです。

広く男女間の暴力行為と認識されるようになったDV

しかし、DVという言葉が輸入され、一般に浸透するにしたがって、女性に対する人権侵害がDV問題の本質であることが理解されてきました。

夫婦間に代表される男女間における暴力の被害者はほとんどが女性です。

内縁を含む配偶者間の犯罪における女性が被害者となった割合は、傷害罪で93.5%、暴行罪で91.9%です(※)。圧倒的に女性が被害者なのです。

※平成28年検挙件数「配偶者からの暴力に関するデータ」内閣府男女共同参画局(平成30年9月28日)http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/data/pdf/dv_data.pdf

しかも、配偶者等である男性からの暴力について、都道府県の配偶者暴力相談支援センターに相談がなされた件数は、全国で1年間に10万4082件にも昇っており、多数の女性が被害を受けている実態がわかっているのです(※)。

※平成29年度全国相談件数「配偶者暴力相談支援センターにおける配偶者からの暴力が関係する相談件数等の結果について」内閣府男女共同参画局
http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/data/pdf/2017soudan.pdf

今では、社会的には「家庭内」という用語にとらわれず、夫婦だけでなく、恋人関係まで含め、広く男女の間における暴力行為と認識されるようになりました。

DV全般を定義している法律はない

ただ、DVという用語を全般的に定義した法律は未だ存在しませんし、DVは法律用語ではありません。

いわゆる「DV防止法」と言われる「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(配偶者暴力防止法)がありますが、この法律がDVの全般的な内容を定めているわけではありません。

この法律は、夫婦間、内縁の夫婦間、生活の本拠を共にしている交際相手(つまり同棲相手)からの物理的、精神的暴力を対象としていますが、恋人間の暴力は対象としておらず、DVの一部のみを対象としています。

精神的DVとは何か?

精神的DVとは、殴る蹴るといった物理的な暴力(有形力の行使ともいいます)以外の方法、例えば言葉や態度で被害者に攻撃を加える場合をいいます。

いわゆるDV防止法(配偶者暴力防止法)も物理的な暴力だけでなく、精神的暴力も対象としています。

その第1条では、次の行為を「暴力」としています。
・身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの
・これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動

この心身に有害な影響を及ぼす言動が、精神的DVに該当する行為と理解することができます。どのような行為がこれに当たるかは、後ほど詳しく例をあげます。

モラハラと精神的DVの違い

モラハラとは、精神的な嫌がらせのこと

モラハラのモラル(Moral)はフランス語です。日本では「道徳」、「品行」という意味に理解されることが多いのですが、モラハラの場合は「精神の」という意味です。

ハラスメント(Harassment)は、「嫌がらせ」、「悩ませること」を意味します。

つまり、モラルハラスメントとは、「精神的な嫌がらせ」のことです(この点、モラハラの「モラル」を「道徳」と理解して、加害者が被害者の道徳面を避難する嫌がらせがモラハラだと紹介しているサイトもありますが間違いです)。

モラハラは、道徳面の攻撃に限らず、広く精神的な攻撃行為を含んで理解されています(※)。

※参考サイト①
「フランス『モラル・ハラスメント』規制を法制化」独立行政法人労働政策研究・研修機構
https://www.jil.go.jp/foreign/labor_system/2005_11/france_01.html

※参考サイト②
「労働環境リスクとモラルハラスメント規制の動向と課題」滋賀大学経済学部 大和田敢太教授 彦根論叢387号136頁以下
http://www.biwako.shiga-u.ac.jp/eml/Ronso/387/owada.pdf

精神的DVはモラハラの一種

モラハラは、精神的な嫌がらせなので、男女間の精神的暴力である精神的DVは、モラハラの一種ということになります。この関係を図示すると次のとおりです。

精神的DVはどんな行為があるのか?

ここで、DVにはどのような行為があるのかを整理して説明しましょう。

物理的、身体的なDVの例

  • ・手のひらでひっぱたく
  • ・拳で殴りつける
  • ・蹴飛ばす
  • ・拳で殴りつける
  • ・物品を投げつける
  • ・頭髪をつかんで引きずりまわす
  • ・喉首を締め上げる
  • ・ナイスや包丁を突きつける
  • ・胸ぐらをつかむ
  • ・耳元で大声を出す

DVのうち、物理的な暴力は、不法な有形力の行使として、それ自体が刑法の暴行罪(刑法208条)にあたり、怪我をさせた場合は傷害罪(刑法第204条)にあたります。

物理的な暴力が犯罪となる場合
怪我の有無 罪名 刑罰
怪我なし 暴行罪 2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料
怪我あり 傷害罪 15年以下の懲役又は50万円以下の罰金

精神的なDVの例

  • ・家に生活費をいれない
  • ・大声でどなりつける
  • ・両親、兄弟、友達との交流を止めさせたり、文句を言う
  • ・常に監視し、外で何をしていたかを逐一質問する
  • ・口をきかず、無視する態度に出る
  • ・他人の面前で小馬鹿にする
  • ・子どもを虐待するぞと脅かす
  • ・命令口調で話す
  • ・私物を勝手に壊したり、捨てたりしてしまう
  • ・仕事を持つことを拒否したり、勤務先を辞職させたりする
  • ・「俺が稼いでいるから飯が食えるんだろ」などと言う
  • ・実際にはやらないが、殴ろうとするフリをするなど暴力に訴えそうな気勢を示す
  • ・長時間、延々と説教を続ける
  • ・実家に火をつけてやるなどと脅す

精神的なDVであっても、被害者やその親族に害悪を及ぼすことを告知すれば、刑法上の脅迫罪(222条)や強要罪(223条)となります。

また精神的なDVの結果、被害者がPTSD(心的外傷後ストレス障害post traumatic stress disorder※)となってしまうなど、健康を害する状態となれば、傷害罪となる場合もあります。

※PTSDとは、地震、火事、飛行機事故などの災害や犯罪による被害者に発症する精神障害です。過去の受傷した体験などを反復して思い出してしまい、そのときと同様の精神的苦痛を受けたり、そのような苦痛を思い出す状況を避けたり、音や刺激に過剰に反応し、不眠などが継続したりします。

精神的なDVが犯罪となる場合
内容 罪名 刑罰
被害者や親族の生命身体などに害悪を加えることを告知 脅迫罪 2年以下の懲役又は30万円以下の罰金
同上の告知をしたうえ、被害者に義務のない行為を行わせる又は権利行使を妨害 強要罪 3年以下の懲役
PTSDなど精神障害の結果を招く 傷害罪 15年以下の懲役又は50万円以下の罰金

性的なDVの例

  • ・性交渉を無理強いする
  • ・妊娠したのに中絶を強要
  • ・避妊に協力しようとしない
  • ・意に反してポルノを見せる
  • ・拒否しているのに性行為を撮影する
  • ・合意していないのにアブノーマルな行為を強要する

たとえ夫婦や恋人同士であっても、性的な行為や性交渉を無理強いすることは、強制わいせつ罪(刑法176条)や強制性交等罪(177条)に該当する行為です。

性的なDVが犯罪となる場合
内容 罪名 刑罰
暴行脅迫を用いてわいせつな行為 強制わいせつ罪 6月以上10年以下の懲役
暴行脅迫を用いて性交など 強制性交等罪 5年以上の有期懲役

なぜ女性はDVの被害者となりやすいのか?

ほとんどの被害者が女性である理由としては次の諸点が指摘されています。

  • ・根強く残る男尊女卑思想
  • ・男らしく、女らしくという歪んだ社会通念
  • ・体格差
  • ・経済的な格差
  • ・アルコールや薬物の影響
  • ・恐怖心から逃げられない
  • ・無力感、諦め
  • ・暴力を愛情表現と誤解するなど被害に無自覚
  • ・独立する経済力がなく生活のために我慢
  • ・子どもの扶養や進学のために我慢
  • ・逃げ出すことで職業や人間関係を失うリスク
  • ・両親のDVを見ながら育った子どもが同じ方法で問題解決を図る傾向

DVをする男性のタイプとは?

DVに走る加害者男性には、決まったタイプはないと言われています。

一見して粗暴なタイプや肉体的労働者などに多いように錯覚してしまいがちですが、実際はそうではありません。老年・中年・若年のどれか、高卒・大卒・院卒のどれか、ホワイトカラーかブルーカラーか、経済力の多寡、これらの要素とDVの傾向は無関係なのです。

人品卑しからぬ紳士で、社会的な地位も高く、世間的には立派な人格者とみなされて、とても、毎日、妻を殴りつけたり、罵倒したりしているとは思えない男性でも、実は日常的にDVを行っていたというケースもあります。

もちろん、妻以外の他人に対しても暴力的なタイプやアルコール中毒、覚せい剤中毒など、DVにとどまらない犯罪傾向が認められる男性も多くいます。

しかし、外部からは見ることができない家庭という、いわば密室であるからこそ、暴力や暴言に訴えるという陰湿な男性も多数いるのです。

精神的DVは離婚理由となるのか?


精神的DVを受けていることは、十分な離婚理由となります。

離婚の方法の主なものとしては、当事者が協議して離婚に合意し、離婚届を役所に提出する協議離婚、家庭裁判所において調停委員の仲介で話し合いを行って合意する調停離婚、離婚訴訟で家庭裁判所の裁判官に強制的に離婚を認めてもらう裁判離婚があります。

裁判離婚が認められるためには離婚原因が必要です。民法は、離婚原因として不貞行為、悪意の遺棄などを定めていますが、これらは離婚原因を限定するものではなく、離婚原因の例示に過ぎません。その他にも婚姻生活を継続し難い重大な事由があれば、離婚が認められるのです。

精神的DVが婚姻を継続し難い重大な事由に該当するかどうかは、個別の具体的事情によります。

精神的DVが、脅迫罪などの犯罪に該当する場合は婚姻を継続し難い重大な事由にあたると判断される場合が多いでしょう。

精神的DVには慰謝料を請求できるのか?

精神的DVに対しては、慰謝料を請求することが可能です。

他人の権利や法的保護に値する利益を違法に侵害して損害を与えた場合、加害者は損害を賠償する義務を負担します。これを不法行為といいます。

慰謝料は、精神的な苦痛を損害として評価し、その埋め合わせを賠償金として請求するものです。

精神的DVが脅迫罪など犯罪に該当する場合は、不法行為として慰謝料請求が認められることに問題はありません。

犯罪行為に該当するとまで言えない場合には、どのように判断されるのでしょうか。

精神的DVには幅広い行為が含まれており、異性間における相手方を傷つける言動のすべてが、不法行為にあたると考えることはできません。人間が他人と接触、交流する社会的な存在である限り、人との関わりの中で精神的に傷つく場合があることは不可避だからです。

そこで、精神的DVの行為態様、被害の程度、当事者の関係などの諸般の事情を総合考慮して、社会生活上受任すべき限度を超えているかどうかを判断することになります。これを受任限度論といい、不法行為による損害賠償請求の可否を判断する際に多く用いられる考え方です。

なお、精神的DVが離婚裁判において婚姻を継続し難い重大な事由と判断されて裁判離婚が認められる場合は、受任限度論によるまでもなく、婚姻生活を破綻させて離婚を余儀なくしたこと自体が不法行為となり、慰謝料請求が認められるでしょう。

精神的DVを受けたときの対処方法とは?


精神的DVの被害を受けたときには、刑事告訴、離婚請求、慰謝料請求などの法的措置で対抗し救済を受けることになります。

ただし、加害者は多くの場合、精神的DVの事実を否定しますから、被害の事実を証明できるように証拠を残しておくことがとても大切です。

殴るなどの物理的な暴力の被害は、被害を受けてから時間を置かずに病院での診察を受診し、診断書を作成してもらうとともに、傷や打撲痕の写真、動画を撮影しておくことが肝要ですが、精神的DVの場合はどのような方策があるでしょうか。

  • ・加害者の言動をスマートフォンで録音、録画する
  • ・脅迫や粗暴な言動がメールやラインによる場合は、スクリーンショットを撮影するなどの方法で保存しておく
  • ・どのような加害行為で被害を受けたかを日記、メモなどで記録する

スマートフォンが普及した現在では、精神的DVの加害行為を記録しておくことは昔よりも容易になったといえます。

しかし、そのことは加害者側も十分に承知していますから、自分の行為がDVであると自覚している加害者ほど、被害者のスマートフォンの中身をチエックする、メールやラインを残さないなどの隠蔽を行います。

これに対応するには、もう一台、スマートフォンなどを用意して、隠しカメラ的に利用することもやむを得ないでしょう。相手の同意を得ない撮影、録音であっても、後に法的手続の証拠として用いることには問題はありません。

精神的DV被害と保護命令の関係は?

配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(配偶者暴力防止法)では、DV被害を受けた被害者は、裁判所に申し立てることで、加害者に対して被害者への接近を禁止するなどの命令を発令してもらうことができます。これを保護命令といいます。

ただ、保護命令の発令対象となるのは、次の場合です。

  • (ア)配偶者(※)からの身体に対する暴力を受けた被害者が、配偶者からの更なる身体に対する暴力により、その生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいとき
  • (イ)配偶者からの生命等に対する脅迫を受けた被害者が、配偶者から受ける身体に対する暴力により、その生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいとき

※ここにいう配偶者には、事実婚や同棲関係も含みます。

つまり、精神的DVの被害者との関係では、生命などに対する「脅迫」に該当する精神的DVを受けた被害者で、かつ、加害者による身体的な暴力で生命身体に重大な被害を受ける危険があるときであって、はじめて保護命令の発令を受けることができると非常に限定されています。

したがって、残念ながら精神的DVでは保護命令は限られた場合にしか活用できません。

そこで精神的DV被害については、婦人相談所や配偶者暴力相談支援センターといった専門のDV被害者を支援、相談する機関への相談が有益です。

参考サイト:配偶者からの暴力全般に関する相談窓口(内閣府男女共同参画局)
http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/soudankikan/index.html

これら機関に相談することにより、婦人保護施設、母子生活支援施設、民間シェルターなどの保護施設に一時的に避難することも可能です。

まずは身の安全を確保し、生活を落ち着かせてから、刑事告訴、離婚請求、慰謝料請求などの法的手段を検討することができます。

これらの法的手段は、弁護士を代理人とすることで円滑、確実に手続を進めることができます。

まとめ

精神的DVの被害者は被害を我慢してしまう場合が多いですが、被害者本人のためにならないことはもちろん、DVの放置、黙認は違法行為をエスカレートさせかねず、加害者のためにもなりません。
精神的DVでお悩みの方は、ぜひ法律事務所に御相談ください。

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